展覧会名   :  「子ねこチビンケと地しばりの花」原画展
               ー未決囚十一年の青春ー復刊記念
 期日      :  6月1日(火)〜6月13日(日) 12:00〜19:00 / 最終日〜17:00
 特別対談   :  6月6日(日) 15:00〜17:00(入場無料
             荒井まり子
             越光照文(風・虹のクロニクル 演出家) 他 1名(俳優)
 作者      :  荒井まり子
 共催      :  救援連絡センター
             ギャラリーTEN
 内容      :  1974年連続企業爆破事件で爆発物罰則違反のほう助罪に
             問われた著者が獄中生活中に結婚した夫、彰さんとの
             文通形式で回想した本の復刊を記念し、著者自ら描いた
             原画60点ほどを展示。
             制約の多い獄中で著者自ら描いた珠玉のイラスト画展です。
・獄中画の世界 � ーーーーーーーー
 「小ねこチビンケと地しばりの花ー未決囚十一年の青春」
(著者荒井まり子)という本がある。
もう絶版になっているが、二十三年ほど前、径書房から出版された。
1974年連続企業爆破事件で爆発物罰則違反のほう助罪に
問われた著者が獄中生活中に結婚した夫、彰さんとの文通形式で回想した本である。
宮城県古川村の中、高校時代、大学入学と学生運動、
中退、短大再入学、爆弾テログループと東アジア反日武装戦線
”狼”とのかかわりなど「全共闘世代」の人生やながい拘置所生活が
ありのまま素朴な文章でつづられている。
そして丸木スマ「母猫」の表紙絵(旧版本)とともに著者自ら
描いた21枚のさし絵があり、これが文章にマッチした
繊細な美しい線描で描かれ、できばえがすばらしい。
黒ボールペンだろうか、ところどころにインクのたまりや
かすれがあるが、丁寧に一本一本の線を大切に扱っており、
作者の優しさが見る者の心に響く。
獄中では絵を描く制約が多くいわゆる獄中絵画様式と
いうものがあるそうだ。東京拘置所の場合黒、赤のボールペン、
黒のサインペン、それに筆ペンとシャープペン。
最近はそれに青のボールペンが加わり、
これを東京拘置所様式というのだと。
まり子さんのさし絵を見て色鉛筆ぐらい使って描かせ
たかったなと思うのは私だけではないだろう。
それほど、さし絵がすばらしい。
 
おおくの獄中画には、緻密に線を積み重ね描かれたもの
が多い。線と線の間隔がなるべく重ならないように、平行に
出来るだけ間隔を狭く線を描くか、または重なってクロス
する場合でも、丁寧に気をつけて、決して投げやりな線描
にはならない。
なぜだろうか?
「獄中では時間があるから・・・」という。
しかしわたしにはそれだけとは思えない。
絵を描き始めたころ、物を再現することに一生懸命になる。
写真みたいに出来上がるとうれしいもの。繰り返し模倣する
ことから次第に技術は上がり表現の扉が徐々に開かれていく。
そして、重ねて描くうち集中度が高まり像化作業の中で
ある種の解放感を得られるようになる。
やがて、自分が表現したい一番のものを探し出し絵の中心に置いていく。
心地よく収まればまた次の解放感が得られ、次々に重畳
する線描から新たなイメージの連鎖がおこる。
わたしたちが見ている獄中絵画とは、これらさまざまな
段階にある作者たちの心の中そのものなのだと思う。
 
*獄中画参考ページ
平沢貞通獄中画の一枚                                松橋 博